DOSEIの日記

技術メモ+日常ログ

3 次対称群 (Symmetric Group of Degree 3) S3

定義

  • 3 つ元に対する置換作用の全体 S3 = { 1, r, l, s, t, u } (位数 6(=3P3))
    • (1 2 3) → (1 2 3) : 1 (単位元)
    • (1 2 3) → (3 1 2) : (1 2 3) =: r (右巡回)
    • (1 2 3) → (2 3 1) : (1 3 2) =: l (左巡回)
    • (1 2 3) → (1 3 2) : (2 3) =: s (1 を固定)
    • (1 2 3) → (3 2 1) : (1 3) =: t (2 を固定)
    • (1 2 3) → (2 1 3) : (1 2) =: u (3 を固定)
  • 作用される要素(つまり並び替えをされる集合)を指定して(上の場合は、 M = { 1, 2, 3 } ) SM, Sym(M) とも書く。
    • M は { い, ろ, は } でも, { ○, □, △ } でも何でもいいが, { 1, 2, 3 } に自然に同一視できる。
  • 一般に対称群の部分群は置換群 (permutation group) という。つまり、すべての置換が成す置換群が対称群である。置換群という場合には、真部分群に限ることが普通らしい。

乗積表 (Cayley table)

1 r l s t u
1 1 r l s t u
r r l 1 u s t
l l 1 r t u s
s s t u 1 r l
t t u s l 1 r
u u s t r l 1

逆元

1 r l s t u
その逆元 1 l r s t u

性質

  • 合成に関して群。
  • 群なので逆元が必ずある。
  • 非可換 (non-Abelian) *1
  • 可解である*2
    • S3正規部分群A3 (下記)。
    • S3A3 = { 1, s } はアーベル群
  • 基本関係
    • r3 = l3 = s2 = t2 = u2= 1
    • sr = r2s = t
    • s=utu
  • 3角形を自分に重ねる変換 (3つの頂点番号を付け替える操作) でたとえると
    • r, l は、中心を軸に 120 度の左右回転
    • s, t, u は、中心を通る軸で裏返し

生成元 (元は定義の順に対応)

  • t, u ⟩ = { 1, tu, ut, utu, t, u }
  • u, s ⟩ = { 1, us, su, s, usu, u }
  • r, s ⟩ = { 1, r, r2, s, sr, sr2 }

置換の符号

  • 偶置換 { 1, r, l }
  • 奇置換 {s, t, u }
    • 偶置換と奇置換は必ず同数である。
  • 偶置換を +1, 奇置換を −1 に写像する関数 sgn: S3 → { +1, −1 } は群準同型写像
    • 偶奇の置換の合成とその符号の関係は自明だ。
    • 群 { ±1} の単位元は 1 なので、 ker S3 は偶置換全体。 (下の交代群である)

交代群 (Alternating Group)

  • 偶置換全体 A3 = { 1, r, l } = ⟨ r ⟩ = ⟨ l
  • 類別 S3 = A3sA3

元の位数

  • ⟨ 1 ⟩ = { 1 } なので 1
  • r ⟩ = { 1, r, l } なので 3
  • l ⟩ = { 1, l, r } なので 3
  • s ⟩ = { 1, s } なので 2
  • t ⟩ = { 1, t } なので 2
  • u ⟩ = { 1, u } なので 2

共役関係: 以下の共役類によって類別される

  • 共役類
    • { 1 }
    • { r, l }
      • r = sls−1 (長さ 3 の巡回置換)
    • {s, t, u }
      • s = utu−1 = tut−1 (長さ 2 の巡回置換)

中心

任意の元に対して可換な元。このような元は自己共役である。

  • この群では、単一要素の { 1 } である。 *4
    • 単一要素の共役類は中心であることから自明。*5
    • 中心なので正規部分群である。 ({ 1 } なので自明だ)

中心化群 (centralizer. センタライザじゃないよ)

ある要素 g に対して、可換な元の集合 CS3(g)。または部分集合 S (⊂ S3) に対して、 CS3(S) とかく。 (以下、 S3 を省略)
中心の定義との違いに注意。

  • C(1) = S3
  • C(r) = { 1, r, l }
    • 1r1−1 = rrr−1 = lrl−1 = r
    • つまり、 r を共役によって不変にするもの。 共役に関する r の固定部分群。
  • C(l) = { 1, r, l }
  • C(s) = { 1, s }
  • C(t) = { 1, t }
  • C(u) = { 1, u }
    • 以上、どの元の場合も、中心化群の位数と共役類の位数の積は|S3| = 6 と等しい。
  • C({ r, l }) = { 1, r, l }
  • C({ r, s }) = { 1 }
  • C(S3) = { 1 }
    • 自分自身の中心化群は、中心ということ

*1:一般に n>2 では非可換

*2:位数が 59 以下の有限群はすべて可解であることが証明されている。

*3:一般に An は長さ 3 の巡回置換の全体

*4:複数要素がある群の例はなんだ?

*5:一般に Sn, n ≥3 の中心は単位元のみ