Geometric Algebra (0)
普通のベクトルでは, 幾何的な概念が十分表現できない. せいぜい拡大縮小 (スカラ倍) や合成 (足し算・引き算) 程度の操作しか定義しない. もっと, 幾何を表現できるリッチな代数系を構成したい.
幾何的積
これから考える幾何的代数 (geometric algebra) には幾何積 (geometric product) というもっと柔軟な操作を定義する. n 次元ベクトル空間に対して, 二つのベクトルの幾何積を ab と (ベクトルを連続して並べたもの) で表すとする. この積には,
という性質を持つものである. (とりあえず, 幾何的意味とか, 具体的な内部表現は考えないことにしよう.)
幾何積は可換ではない。ここで、次の対称な積と反対称な積を定義できる. (これも通常のベクトルでの内積・外積と関係あるかどうかはとりあえず忘れて.)
- 内積 (inner product) a ⋅ b := (ab + ba) ⁄ 2 (= b ⋅ a)
- 外積 (outer product) a ∧ b := (ab − ba) ⁄ 2 (= −b ∧ a)
すると, 次の基本公式が得られる.
これを, 幾何積の展開形 (expanded form) という.
幾何量の解釈
ベクトルは, 方向付き長さと解釈する. 幾何的代数における内積も, 通常の内積と同様スカラ値で, 同じような解釈を与える.
外積は新しい幾何的量で, それらのベクトルを含む面上の方向付き面積 (directed area) と解釈する. この量を重ベクトル (bivector) と呼ぶ.
ここまで, 次の 3 つの量が出てきた.
これを順に 0-ベクトル, 1-ベクトル, 2-ベクトルと呼ぶ. (一般化のための呼称と考えよう.)
スカラは, 0-次元の対象 (点) で, その絶対値という大きさ (magnitude) と, 符号という配向 (orientation) を持ち, 方向 (direction) は持たない量であると解釈する.
ベクトルは, 1-次元の対象 (方向付き線分) で, 大きさ (長さ), 配向, 方向を持つ量である.
重ベクトルは, 2-次元の対象 (方向付き面分) である. 重ベクトル B に対して, その大きさ (面積) を B := |B| とすると, 大きさと単位面分 B̂によって B = BB̂ と表して, 方向付き面積と解釈できる. (B̂ は単位ベクトルのアナロジ.) 重ベクトルは面積という大きさを持つが, どのような形状であるかということは表さない.
重ベクトルの平方を B2 := B2 と定義する.
*1:勝手に名づけた